TOY&COLLECTION BLOG

# 3
katsuki murase
COLLECTION #5
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1933年版キングコングに登場するステゴザウルス





モデルは職人そのものです。
ache 100回も観た1933年版『キングコング』のお話しを改めてお願いします。
村瀬 ただの巨大なゴリラでなく創造物として確立されたコングは今でもベスト1と言えます。キングコングは確実に特撮映画の歴史のポイントだと思いますし、現在のCG映画より古い特撮には嬉しい偶然があり、それが味になるし、クリエイターの才能を超える事があるんじゃないかと。
ache 確かにオブライエンのコングは別格ですね。とにかくストップモーションで再現した細かい動きが絶妙でコングに魅入っちゃうんです。
村瀬 モデルは職人そのものです。デザインもですが、長い時間自分で表情や動きを写していく作業で魂が宿っちゃうんでしょうね。オブライエンは自分のモデル以上の演技の出来る役者は少ないと語っていたそうですが、これはオブライエン自身役者の才能があったって事じゃないでしょうか。後進の強みもあり技術力は圧倒的に上のハリーハウゼンですが、もしかしたら演技の才能はないのかな?と思う事があります。
ache ちなみに1933年版コングのステゴサウルスのアニメモデルもカスタムされたんですよね?。
村瀬 本物が無理なら複製でも何でもかまわないって気持ちだったんでしょうね。自分にとっての価値だから世間の価値は関係ないんですよ。今回複製したコングとステゴサウルスのアーマチュアのノウハウなどは中学生の時の技術にプラスしてWETAのアーマチュア再現映像に習いました。あと、GIジョーに特殊メイクとボディスーツで1/6ワールドでのリックベイカー気分を味わった1976年版コングも作ってみました。ジェシカ・ラングを脱がせるいやらしい表情と短い腕が特長です。1976年版は人気なくてガレージキットさえ出てませんからコンプリートという事で作っちゃいました。リックベイカー十八番のメカニカルマスクも再現してホットトイズかメディコムトイあたりが商品化したら売れ・・・ませんかね?(笑)。
ache 1976年コング、これは村瀬さんくらいしかわざわざ作らないでしょう(笑)。ステゴザウルスはアッカーマンが所有しているアニメモデルの再現ということですが、これも雰囲気が良いですね~。剥げ具合まで再現したところにマニアックさとこだわり、そしてドラマを感じます。
村瀬 オブライエンの時代の試行錯誤では練り歯磨きまで使ってたそうですから(笑)。ハリーハウゼンは誰にもナイショで強いライトにも負けないラバーの配合を編み出したらしいんですが。後年アッカーマンからピーター・ジャクソンのコレクションとなった恐竜はボロボロなのに、近年資料本で紹介されたハリーハウゼンのアーマチュアは綺麗なままですもんね。もちろん規制概念にとらわれず探せばもっといい素材があるかもしれません。後に続く人達もいっぱい失敗をして悔しい思いをしてたどり着いたわけですから、それは教えられないですよね。オブライエンの「経験だけが先生だ」って言葉の通りです。
ache なるべくなら失敗は避けたいですけどね(苦笑)。
村瀬 オブライエンの言葉、実は近年、声優の大先輩に言われてドキッとしました。シュワルツネッガーの吹き替えで有名な玄田哲章(アニメ「バットマン」の日本語吹替え)さんなんですが、以来オブライエンの声は玄田さんでその言葉が座右の銘になってます。何を好きになるかはその人の人生によるんだと思います。私の人生はコングやバットマンを好きになる人生だったんです。だから今のCGキャラクターに夢中の方もそれはそれで人生。ただそれを一生好きでいられるかって事なんじゃないでしょうか。私は一生好きだと胸を張って言えます。
ache 胸に響くお言葉ありがとうございました。こうやって村瀬さんと対談できたことは、自分自身の「原点」を振り返る良い機会でもありました。
「心の栄養」。
村瀬 acheさんとはコレクターの業の深さについて随分語ってきましたね~。年齢も人生も違いますし好き嫌いも当然異なりますが、映画やコレクションに対して同じルールで生きている人だな~と思ってます。だからここまで交流を深められてきたんでしょうね。仕事でも何でも個性はそれぞれでも同じルールを持てるって大切な事ですし貴重です。これからもお互いに刺激し合いながら慰め合いながら、どうぞよろしくお願いします。
ache こちらこそ、末永くよろしくお願いできたらと思います。年齢を重ねていく内に、モノの考え方など変化が生じるかも知れませんが、それはそれでスパイスとなり、更に刺激し合えると嬉しいです。今回の対談は本当に貴重な時間でした。改めてありがとうございました!最後に何かあればどうぞ。
村瀬 ここまできたらミュージアムとして公開するとか理由をつけないと、人として言い訳出来なくなりますよね(笑)。ホテルでの飲食業界のパイプを使ったらプラネット・オブ・ハリウッドみたいなレストランが出来るかな~、小さくても店内にコレクションを展示出来たら素敵かなって。店が残ればコレクションも引き継がれるし・・・。う~ん、駄目でしょうね。職人気質で商売は苦手だから(笑)。アッカーマンションは本物と複製と市販品が混然としていて、当時は理解出来なかったけど、コレクターとして仏の境地ですよね。高いの安いの市場の理由、仏心には松茸も椎茸も同じキノコ、美味しくて「心の栄養」になれば何でもいいって。サプリメントや食事には気を遣っても「心の栄養」には無関心になりがちです。3日食事しなかったら倒れちゃうし一ヵ月も断食したら死んでしまう・・・。映画を観る、本を読む、心に響いた物を手元に置くって自分にとって「心の栄養」だと思ってます。もちろん本業で得る縁や刺激も栄養ですが、時に体に悪いものを摂取しちゃう事もありますから(笑)。与えられるものと自分で選んだものの違いでしょうね。ささやかな日本のアッカーマンションにて夢敗れても、必要としてくれる方々に恵まれ今幸せだと思います。それでもまだ欲しい物があるのか?と聞かれたら、胸を張って「あり過ぎるっ!」と答えます(笑)。
ache いつの日か日本のアッカーマンションがお店にまで発展されることを楽しみにしてます!その際は是非お手伝いさせて下さい。
katsuki murase
COLLECTION #6



